ブラックフォレスト いまむらせいや 作
あるとき、あるくにの、あるところに・・・
おばけのもりってところがあったとさ。そこはひるでもうすぐらく、
ひかりさえとどかないふかいもりで、あかるいとりたちのさえずりや、
むしたちのとびまわるすがたさえみえず、
ひんやりとしたくうきにカラスのなきごえだけが
ひびくとか・・・
もちろんだれもちかづきやしなかった。
(こうきしんたっぷりのこどもたちいがい)
おとなたちはくちをそろえていう。
「あのもりにゃちかづくな。あそこにゃたくさんのおばけがいて、
うっかりはいるときっとおばけにあうぞ。」とか
「おばけにされてもどってこないぞ。」
とかね。
でも、おとなのことばじゃこどもたちのこうきしんにかぎをかけられなかった。
いたずらっこで、いつもぼうしをかぶっているマーク、すこしうちきなハミング、
そのはんたいにかちきでがんこなクーパー。
なにをするにもいっしょっていうさんにんぐみのこうきしんはね。
マークはいった「もりへいこうもりへいこう。おばけのしょうたいをたしかめに。
もしもおばけにであったら、ぼくらみんなででやっつけて、おとなにじまんしてやろう。」
そうしてこどもたちはゆうぐれの、おとながきづかないうちに、もりをめざしてかけてゆく。
それをまっていたかのように、
もりはおおきく くちをあけ、
あるきにくいくさむらもみちをつくって おくへおくへとさそいこむ。
あやしくひかるキノコたちも、うっすらあかるくあしもとをてらしているよ。
ふとみると、あおいうすあかりのさきに、きにこしかけたおんなのこ。
「おうい。なにやってんだい?こんなもりのなかで、ここはこわいもりなんだぞう!」
マークがすこしおどかすようにいったら、
おんなのこはにこっとわらって、「こわくはないわ。わたしのおうちはもりにあるの。むらがあんまりとおいから、もりのなかであそんでるの。」
さんにんぐみはつよがって「だったらこのもりをあんないしなよ。ぼくらはおばけをやっつけにきたんだ。」
「たのしそうね。じゃ、ついてきて。」おんなのこはさきにたってさきへさきへとすすんでく。
しばらくいくとあかりがみえる。
「やっぱりそうだ。おばけなんていやしない。きっとあのこのうちなんだ。」
そうしてきのあいだからのぞいてみると・・・
ここはおばけの森だったんだ。そう。不気味なおばけがすむところ。
うたったりおどったり、さけんだりわらったり。いろんなことをやっている。
「ほほほ、ほんとにいたんだ!」「こここ、こわい!」とさんにんぐみ。
さっきまでのげんきはどこへやら。
すると、いっしょにみていたおんなのこ、おばけたちのなかにはいっておどりだしたよ。
おばけのかなでるおんがくは、いままできいたことのないメロディ。
そのうちそのねにこどもらも、うきうきしてきて、からだもかってにむずむずして、
こわいことなどすっかりわすれてとびだすと・・・
おばけたちといっしょにおどりだす。
それみておばけもたのしげにおどる。
そのうちいたずらさんにんぐみの、かおやからだがすこしずつかわりはじめる。
あれあれマークはかかしのおばけに。
ハミングはおおきなとりのすがた。
そしてクーパーはまだらのライオンに・・・
さんにんはすがたがかわったのにきがつかない。
ましてや、じぶんたちがにんげんのおとこのこってこともわすれちまった。
おばけたちのパーティーはあさまでつづく。
なかまもふえて、かんげいかいだ。
きみもおいでよかんげいするよ。
いたずらっこはとくにさ!